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Q&A

「片親引き離し症候群」/「逆DV」とは

前回までは男性から女性に対する心身への暴力行為について説明しました。今回はその反対、女性から男性に対する暴力、いわば「逆DV」とも言うべき報復行為についてご紹介しましょう。女性ですから身体的な暴力を振るうことはまずありません。心理的暴力や経済的暴力が中心となります。

NAVERまとめより

心理的暴力の代表が「片親引引き離し症候群、PAS. Parental Alienation Syndrome. Richard Alan Gardner 1985」です。これは両親の離婚や別居に伴い片親がもう一方の親に対して誹謗・中傷を子どもに吹き込み、いわば洗脳やマインド・コントロールを行い、もう一方の親に会わせないようにする行為です。「洗脳虐待」ともいい、子どもの精神・神経発達上、悪影響を及ぼすため、「児童虐待」に相当すると考えられています。

日本は先進国で唯一、離婚後、共同親権を認めていないため、「離婚は縁切り」「離婚後、離れて暮らす親子は関わりを持たない方がいい」「別れた親は子どもを陰からそっと見守るべき」という風潮がありました。それもあり、親権の8割を有する母親は子どもを父親から「引き離し」、どれだけ自分がひどい目に遭ったか吹き込むわけです。そして父親が「面会交流」を求めても、子どもから拒否させたり、子どもの「学校行事」などへも参加させないよう、様々な妨害手段を講じるそうです。

さらに、「代理ミュンヒハウゼン症候群」という疾患があります。母親が子どもの病気を捏造し、看病する「けな気な母親」を演ずる未熟で自己顕示的な性格者が空想虚言や生じる疾患です。もしくは空想や虚言を真実のように物語る、誇大的・被害的な内容が多く、自分も他人もあざむくという疾患です。例えば、子どもが「面前DV」に遭ったと主張し、何年も、小児精神科へ受診させ、診断書を発行してもらい、弁護士や裁判所へ提出するなどの行為などの行為もこれに相当するでしょう。子どもも母親や小児精神科医から「父親が原因による心の病気」だと言われるとその気になってしまうものです。まさに「洗脳虐待」です。以下にRichard Alan Gardnerが定義した片親引き離し症候群の「引き離し」を企てた親における3つのレベル診断をご紹介しましょう。


しかし、子どもは思春期・青年期になると母親のついてきた「嘘」に気づきます。また父親不在であった家庭で欠落していた父性機能により様々な心理的障害を生じます。例えば、男の子は自立心や独立心が不足し、グループでリーダーシップをとれなくなり、時にイジメを受け、不登校・ひきこもりに陥ることもあります。女の子は恋愛関係で父性的な男性を求め、時に不倫や10-20歳の年の差結婚をすることもあるそうです。いわゆる「面前DV」など不仲な夫婦関係を子どもに見せるのは良くないことですが、事態が収束したら、夫婦や家庭のあるべき姿を再び子どもへ教えてあげるのがやはり親の役目でしょう。

また、経済的暴力も女性からの「逆DV」です。「DV」を受けたとしてまず高額の「慰謝料」を請求します。そして、夫に嫌悪感を強く覚えている妻は通常「財産分与」をいただき速やかに離婚するのものですが、「逆DV」をしたたに考える女性は、感情を押し殺し、別居して長期間に渡り「婚姻費用分担金」を請求するそうです。外資系IT企業に勤める男性、林さん52歳(仮称)は約5年間に渡り何千万円も請求され、気づいたら、妻が一軒家を建てていたそうです。彼は一人ワンルームマンションに住んでいますが・・・

しかし、これらの争いは結果的に子どもに「一生の不幸」をもたらします。経済的な保障、そして家庭という心理的な安らぎが得られないことはこれから「生きていく礎」を失わせる行為と言っても過言ではないでしょう。これを防ぐには、各種の専門家が協働し、明確な目標を設け、短期間問題解決することだと思います。具体的には、弁護士、税理士、心理士、そして精神科医らが夫婦や子どもの要望を聞き、状態を観察し、適切な処方箋を用意するべきでしょう。さもなくば、上記の症例のように時間やお金が浪費され、子どもの心は傷つき、気づいたら「手遅れ」という事態に陥ることになってしまいます。しかし、この分野は協働するにもまだ専門家同士の連携ができていないため、個々人が手探りで行っているようです。一日も早く理想の治療体制が整うことを願う次第です。

最後に2010年「子どもとの交流を妨げられている親の団体から」最高裁判所へ提出された「要望書」をご紹介して終わりにしましょう。

2010年4月26日

最高裁判所御中

「要 望 書」

私たち「子どもとの交流を妨げられている親の団体」は、離婚後の親子の交流が守られるよう、以下の事項を法の番人たる最高裁判所へ要望いたします。

1(前文) 2(要望内容要約) 3(具体的事例をふまえて) 4(制度的・人道的問題点) 5(要望に沿えて)

1(前文)
私たちは法律家ではありませんが、ある尊敬する法律家から教わったことがあります。 「憲法の最高法規性は言うまでもないが、その憲法の中でも一番大事な条文は?」 日本国憲法は、法の中の法、法治国家を支える大黒柱です。その大黒柱の大黒柱、「それは 13 条だ」 と。この最大目的の為に法は存在し、法体系が成り立っていると。 「個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉」です。 この法理・法秩序に基づき、私たちは考えます。

2(要望内容要約)
民法 819 条一項、二項に「夫婦離婚時の親権は父母どちらか一方へ定める」と規定されています。また 同条五項に「協議が調わないときの審判」が規定されています。 また、民法 766 条一項で離婚後の子の監護について規定されています。

・ これらの条文が、真に子どもの福祉に適うのか、慎重に検討をしていただきたく思います。
・ また、この条文を運用する(多くのケースにおける)家庭裁判所の裁定が、子どもの人権、親権のない親の人権、双方の人権(憲法 13 条)を深く、回復不可能なまでに侵害している実態を認識していただきたいと思います。
・そして、家庭裁判所で現在行われている、画一的、形式的裁定が見直されるよう指導していただきたいと思います。
・欧米諸国で常識となっている「共同養育・共同親権」に近い、真に人権を尊重した実質的な裁定をしていただきたいと思います。

3(具体的事例をふまえて)
離婚後、親が自由に子どもに会えず親子関係が断絶している事例として、以下を紹介させていただきます。
・子どもが 4 歳のときに引き離されて以来 12 年間、息子に会いたくても会えない親。11 年ぶりに届い た子どもからの初めての手紙に書いてあったのは「10 年分の養育費 480 万円を○○に振り込んでく ださい」という内容。
・八王子家裁にて調停離婚。「月1回子どもとの面会」という約束が親権のある親から守られず、調停3回、履行勧告4回、それでも親権のある親は子供を親権のない親へ会わせないまま現在に至る。
・離婚後、親権のある親(母親)が再婚し、子どもは連れ子として再婚相手と養子縁組をされる。養父の監護権の尊重を理由に水戸家裁の審判は「双方の合意が成立するまで実父と子どもとの面 会は停止する」という内容。
・1 歳半の子ども。調停中、同居する親権のある親が「こちらの条件を受け入れ調停がまとまるまでは 子供に会わせない」と主張。半年の引き離し中。子供を離婚交渉の道具にする人質交渉。(東京 家裁にて継続中。事件番号 平成 22 年(家イ)第 258 号)
・6歳と4歳の子。「子供と直接会うことは控えて欲しい」との調停結果の為、東京と他県(新幹線で 2時間の遠隔地)を行き来し、登下校の我が子を待って声もかけずに距離をおいて確認するだけの 生活が9年間続く。
・片親疎外症候群(PAS: Parental Alienation Syndrome)にかかっている小学校低学年の子どもか ら、子どもの真意・本心とは反対の意向が調査官により「調査結果」として家裁に提出され、その結 果子どもの希望(「母親と一緒に生活したい」)が適わなかった。納得出来ない母親が家裁に理由 を求めても回答してもらえず、約 1 年後の再調停でようやく「調査書」が開示され、その偽りの内容に 驚愕するも会えないままの子どもの心は元に戻らず。
・中学3年、小学6年の息子の母親。子供から引き離され、調停初期はたまに子供たちに会えてい たのが、調停が長引く間に子どもは「金が欲しいだけなのに会いに来るな、くそばばぁ!」と罵るように 変貌。片親引き離し症候群の症状。
・協議離婚後、親権親が面会拒否に転じ、約2年後の最終調停での結果は、「小学5年の子どもと は携帯電話のメールでのみ連絡可。」
・離婚後、幼児に会えない親が自死。

4 これらの事例は下記のような(制度的、人道的)問題点を提起していると思います。
(家庭裁判所・調査官について)
・調停、審判に実質的強制力がない。(形式的に決まっても履行されなければ無意味)
・偏った画一的な判例が、一般市民へ間違った印象を与え、それが拉致同然の子どもの連れ去りな どの事件を誘発させている。(「最初に子どもを連れ去った方が親権を取れる。幼い子どもは母親の 方が必要だ、など」)
・子どもの引き離しに関する専門的知識の欠如
・片親疎外症候群(PAS)についての学習不足
・同居していない親と会えないことによる子どもの心理的・内面への影響の学習不足
・調査報告書の開示に抵抗を示す家裁の姿勢
・調停に時間がかかりすぎる(子供の心が取り返せなくなっては無意味)。
・海外の調停制度との格差(専門性・人員の豊富さ・社会心理学などの研究結果を基に制度が整 備されている)
・(画一的)結論ありきの形式調停・審判実態

(人道的問題点)
・血を分けた我が子から引き離され、精神の安定を欠く状況下で、不利で理不尽な条件を受けざるを得ない「人質交渉」の残酷さ。
・離婚に片一方の法的責任を負わせることが妥当なのか。
・調停、審判結果はその後将来の長期的視野から妥当といえるのか。
・離婚し子どもを失った親が回復不可能なまでに人間性(社会性・個人の尊厳)を貶められている現 実を放置したままでいいのか。
・親権のある離婚親が再婚し養子縁組がされた場合の、養父と親権のない実親との保護法益の考 量不足(798 条)

・北朝鮮による拉致は「家族を、人生を奪い去った」(日本国政府拉致問題対策本部の表現)と解釈されているし、社会に残酷さが認知された。一方、離婚により子どもに会えない親は、我が子に会えない点で北朝鮮による拉致と同様の人権侵害を受けながら、自国の法律にまで見放される不条理が放置されている。

本来、婚姻は当事者の意思のみで成立する行為です。婚姻時は個人の自由意志が尊重される一方で、離婚時には法律が介入してくる。勿論、介入の必要があるからですが、中途半端な介入は一方のエゴを擁護することになります。

ここに例示しました「子どもに会えない親」は犯罪者でも欠陥人間でもありません。毎年16万組を数える離婚夫婦の姿です。離婚夫婦のなかで、どちらが一方的に悪いというケースは稀であり、どちらがより子どもの養育者として適任かなど明確な判断基準がないにもかかわらず、「親権」の無い親は社会性・人間性までも失いかねない現実があるのです。

(このような理不尽な環境に追い込まれ人間性を保てと要求する方が酷だと思います)

夫婦関係が解消されても血を分けた親子関係はなくなりません。ところが、本来別の問題である「離婚」と「親子関係、監護・養育(親権)」が分離されず、混同されてしまっているので、夫婦関係が解消されると親子関係まで失われる現状を引き起こしています。

感情的に高葛藤にある元夫婦間では、親権親が子どもを非親権親へ会わせたがらないのは自然の感情です。そして「夫婦が離婚した場合、子供は同居していない親と会うと精神的に不安定になる」という間違った(*)観念が、この親のエゴ、我侭を助長することになります。(*欧米の研究結果、現在の共同親権までの経緯事実を借りての推論です。)

一方、子供のほうは「片親疎外症候群」になる蓋然性が高いことが大きな懸念です。親権のある親(同居親)の愛情を失うまいと、本能的に同居親の心情と同化しようとします。日常生活の中で「同居していない親」のことが話題に上らなければ敏感に雰囲気を察し、『お父さん(お母さん)のことは話しちゃいけないんだ』と思い、その責任をともすれば自分に負おうとします。同居していない親の悪口を聞かされながら育ったら更に深刻です。自分を作る半分を否定し、また両性を偏りなく認識する機会を奪われ、そのことは成長するに従って人生の様々な局面で弊害となります。

市民の行動を法律で隅々までコントロールすることは出来ません。とはいえ、法律という枠組みが行動規範となり、その規範に適う概念が時間をかけて社会常識として人々の意識に浸透していくことを考えれば、「人権を無視してもかまわない」と誤解されるような法律や法律運用があることは、行動規範としての法の役割が機能していないことになります。私たちはこれらの現実を憲法13 条「個人の尊重・幸福追求権」に反する人権侵害と考え、(要望内容要約)に述べましたように、最高裁判所へ要望するものであります。

5(要望に沿えて)
民法施行の明治 31 年以来、社会のあり方は大きく変貌し、核家族化はいうまでもなく家族観も変化し続けています。社会的妥当性を欠く法律による制約が原因で、問題を解決するどころか悪化させていないかどうか、検討は急務の時期と痛感しております。「離婚とその後の親子の関係」について実質的、十分な調査をせず不平等な法律のまま放置している不作為責任は立法府にあると考え、私たちは民法改正運動を行っております。

とはいえ、法律・制度が整うまで、子どもの成長は待ってはくれません。 司法府の最高裁判所におかれましては、これ以上人権侵害が引き起こされないよう、法の許す範囲でご英断くださいますよう切にお願い申し上げる次第です。

「くにたち子どもとの交流を求める親の会」東京都国立市中 3-11-6 スペース F(*)この問題について、欧米での長年の研究成果から規範となりうる価値観を紹介している本があります。「棚瀬一代 著『離婚で壊れる子どもたち』心理臨床家からの警告」恐れながらぜひご一読していただきたいと存じます。

 

 

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