よくある質問
Q&A精神科の薬について教えて下さい
「抗不安薬・睡眠薬」にはデパス・セルシンといった抗不安薬、ハルシオン・レンドルミンなどの睡眠薬は昭和の時代から処方されてきました。内科でも気軽に処方されてきました。そのため世の中では馴染みがあることでしょう。しかし、最近、上記の通り依存・耐性が問題となっています。更に、一部の方々は乱用されたり、犯罪に用いたりすることさえありました。平成29年、厚生労働省は慎重な処方をするよう指示しました。
「抗うつ薬」は比較的、安全です。新世代と呼ばれるSSRIやSNRIは以前のような口渇や便秘などの副作用もなく服用しやすくなりました。だからと言って乱用は禁物です。一時期、SSRIにより躁転やActivation Syndromeを生じる事例が多々報告されることがありました。本当に「単極性」うつ病なのか、他の精神疾患ではないのか、鑑別診断を確実にしなければなりません。それには十分な家族歴や生活歴を聴取する必要があります。安易に「うつ状態」というのみで処方しては後々、事故につながる可能性があります。「気分安定薬」とは双極性障害、躁うつ病に用いられるお薬です。リチウムとバルプロ酸が代表的です。昨今、Soft Bipolar Spectrum という疾患概念が提唱され、うつ病・躁うつ病は連続体であり、上記のように安易に抗うつ薬を処方することなく、家族歴・生活歴を詳細に聴取し、リチウムを優先すべきということが世界的に推奨されています。リチウムは過量で中毒を生じますが、少量ならばそれ程の副作用もございませんので、再燃予防として血中濃度や腎機能など確認しながら継続されることをお勧めします。バルプロ酸も同様、大量に服用すると高アンモニア血症という副作用はございますが、慢性疼痛、最近話題になっている線維筋痛症にも有効性があると言われています。長期間、服用するにおいては、上記、抗不安薬や睡眠薬よりも依存・耐性はございませんので、用法・用量を適切に管理されていれば適切と考えます。「抗精神病薬」とは幻覚・妄想、精神運動興奮といった精神病症状を抑えるお薬です。大きく分けますと、「定型・非定型」になりまして、わかりやすく表現すると旧型・新型とも言えましょうか。非定型はさらに細分化され、SDA・MARA・DPAとなります。詳細は薬理学的に説明しますと難解ですので、専門書などをご参照くださいませ。抗精神病薬ですが、必ずしも精神病状態に関わらず用いられます。アリピプラゾールは抗鬱・抗躁作用が認められいますし、クエチアピンは双極性障害・躁うつ病の薬として保険申請が通りました。
「精神科でよく処方される身体薬」です。精神科では以外なほど多くの身体薬が処方されます。その多くは「向精神薬の副作用を緩和する薬」と「精神疾患に伴う身体症状を緩和する薬」です。身体科にも習熟した精神科医は内科や耳鼻科・皮膚科・眼科など診察・処方もして下さることでしょう。ただし重要なことは限界を見極めることです。精神科医のもとで漫然と診察・処方してもらってよいのか、時には専門医を受診しなければならないのかのタイミングです。これはいわゆる「かかりつけ医」や「総合診療医」における専門医紹介の事例と同様です。この問題に対しては医師と患者とが普段から信頼関係を維持しつつも、自信のない時は「セカンドオピニオン」として専門医や上級医へ「コンサルテーション」を行うことでしょう。個人的な意見としましては、患者さんより「セカンドオピニオン」を求めらた時、自らの「分限」をわきまえ「謙虚」になれるかは、その医師の人間としての「器」が試されるのではないかと考えます。
参考:今日の治療薬、南江堂