よくある質問
Q&A自殺予防、報道ガイドライン/厚生労働省・WHO
WHO. World Health Organization 世界保健機構は、2017年「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識(自殺報道ガイドライン)」を発表しました。Internet や SNS の急激な普及により、世界中の人々が瞬時に大量の情報を共有できるようになりました。それはもちろん「光」をもたらしましたが、今回のような「影」をも落としました。事実や情報は時に「凶器」となり、人々の心を切り裂きます。そこで、WHOは一目で分かるように下記のように提示しました。
やってはいけないこと
・自殺の報道記事を目立つように配置しないこと、また報道を過度に繰り返さないこと
・自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
・自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
・自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
・センセーショナルな見出しを使わないこと
・写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと
まさに、マスメディアの報道により、自殺が連鎖し、群発自殺を生ずるような行動です。反対に、自殺予防のため、推奨すべきことも提示しました。
やるべきこと
・どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること
・ 自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないように しながら、人々への啓発を行うこと
・日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道をすること
・有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること
・自殺により遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること
・メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること
いずれも、事実に振り回されるのではなく、むしろ、事件や事故に対し、正確で安全な情報のみを得て、前向きに認識するように勧告している訳です。
前回ご紹介しました「ウェルテル効果」に対し、「パパゲーノ効果 Papageno Effect」も認められています。ウィーン大学公衆衛生センター Thomas Niederkrotenthaler PhD が2010年に発表しました。PapagenoとはモーツァルトMozartのオペラ「魔笛」の登場人物によります。
なお、「魔笛」は、モーツァルト最後のオペラです。作曲を依頼したアウフ・デア・ヴィーデン劇場の座長シカネーダーが自らパパゲーノを演じ、モーツァルト自身の指揮により、1791年9月30日、初演されました。その後、モーツァルトは同年12月5日に亡くなりました。最後まで「もう一度、魔笛を聴きたい」と言っていたそうです。
さて、マスメディアの報道は、自殺などが生ずると、それに前後する「エピソード」を誰にも分かるように「ストーリー」にする傾向があります。しかし、精神医療・医学の見地からしますと、必ずしも映画やドラマのように脚本や筋書がある訳ではございません。「脳・神経」や「身体・諸臓器」、そして様々な偶然と不幸など重なり合い、残念ながら起こるものです。我々は「いま思えば、あの時の言葉が、あの時の行動が…」と悔恨を言葉を聞くことが少なくありません。それは「いま思えば」で「あの時」はどうしても気づかなかったものなのです。
しかし、これからできることは、今回の出来事を教訓にし、二度目・三度目のような事態を招かないよう、予防に努めていくことです。昨今の社会現象は大変、残念ですが、厚生労働省・WHOの勧告を傾聴し、これからのために、日々、尽力してまいる次第です。