よくある質問

Q&A

アスペルガー症候群とは

部下のことで相談です。頭はよく、学歴も立派なのですが、協調性がありません。飲みに誘っても加わらないし、会話では唐突に関係ないことを言いだします。普段から自分の意見にこだわっていて、少しでもそれに合わないと怒ります。個人作業は人並み以上にできるのですが、集団行動となると皆、困ってしまい、苦情が絶えません。(40代、男性)

管理職として部下の方の処遇に困っていらっしゃるのですね。部下の方は、人づき合いが苦手、会話が上手くできない、こだわりが強い、といった特徴をもっていながら、勉強はよくできたようですから、アスペルガー症候群(高機能・自閉症)が疑われます。これは、対人関係・社会性の障害、コミュニケーションの障害、興味や関心の限局性、を特徴とする自閉症スペクトラム障害で、知的障害の認められない一群をいいます。診断基準の一部を以下にご紹介いたします(DSMⅣ改変)。

A. 対人的相互作用の質的な障害(2つ以上)
1. 目と目で見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、
対人的相互反応を調整する多彩な非言語性行動の使用の著明な障害
2. 発達の水準に相応した仲間関係をつくることの失敗
3. 楽しみ、興味、成し遂げたものを他人と共有することの欠如
(例えば、他の人達に興味あるものを見せる、持って来る、指さす)
4. 対人的・情緒的な相互性の欠如

B. 興味・活動の限定され反復的・常同的な様式(1つ以上)
1. 特定の対象に異常に熱中すること
2. 特定の習慣・儀式にこだわる
3. 常同的・反復的な衒奇的運動
(例えば、手や指をぱたぱたさせたりねじ曲げる、複雑な全身の動き)
4. 物体の一部に持続的に熱中する。

また特に高い集中力や記憶力を有する方をサヴァン症候群ともいい、映画「レインマン」がまさにその様子を描いています。このような方々は集団行動は苦手であっても、個人行動では才能を発揮することが少なくありませんから、その方に合った職場や仕事を与えるのがよいでしょう。適材適所という考え方です。具体的には、あまり対人関係の葛藤を生じる職場は避け、一人で黙々と行える業務がよいでしょう。アスペルガー症候群の方々は雰囲気を読むことが苦手(俗に言う”KY”、その場の空気を読めない)で、自分の思い込みで行動してしまうからです。逆に、その方が興味・関心を抱いた対象には並々ならぬ集中力を発揮します(俗に言う「おたく」という方々・行為)。

『レインマン』(原題: Rain Man)は、1988年公開のアメリカ映画。制作会社はユナイテッド・アーティスツで、監督はバリー・レヴィンソン。原作のバリー・モローはロナルド・バスと共同で脚本を執筆した。主演はダスティン・ホフマン、トム・クルーズ。第61回アカデミー賞と第46回ゴールデングローブ賞、さらに第39回ベルリン国際映画祭においてそれぞれ作品賞を受賞。自由奔放な青年と、重いサヴァン症候群の兄との出会いと人間としての変化を描いたヒューマンドラマである。また、ロードムービーとしての側面を備えた作品でもある。

チャーリー(トム・クルーズ)は高級車のディーラーをしているが経営が思わしくない。そんな彼のもとに長い間没交渉になっていた父の訃報が届く。遺産目当てに故郷にかえったチャーリーは、車とバラ以外の財産がサヴァン症候群の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)への信託財産として運用されることを知る。遺産を手に入れようと、チャーリーはレイモンドが入所している施設から強引にレイモンドを連れ出し、ロサンゼルスに戻ろうとするが、その道中でレイモンドの持つ特殊な才能と、幼い頃に彼と交わした交流を思い出す。

何かトラブルに直面し、本人が問題を認識したら、治療を受けることも勧めてみましょう。職場や学校への不適応から、不眠・不安・うつを生じ、精神科を受診した患者さんの中に、その目でよく見るとアスペルガー症候群の方が少なくないといいます。このような場合、やみくもに対症療法を行うのではなく、その背景にある人格・発達の問題に注目して働きかけることが必要です。それには、本人もさることながら、親御さんから幼少期の発達歴に関するエピソードを聴取することが大事です。

先天性障害のため、「根治」はできませんが、問題行動を減らし、社会適応を高め、症状や障害を「緩和」していくことはできます。障害に対する知識を本人および周囲の方々が共有することで(心理教育 Psycho-education)、本人は自分の問題が何から生じているのか客観的に理解し、より良い行動をとれるようになります。周囲の方々はその方の問題が単なる性格ではなく、発達障害という先天性疾患によると、偏見のなく広い心で見守れるようになります。そして SST, Social Skills Training により上手な社会生活の送り方を身に付けます。時に的確な指導を行い、時に環境の調整を行い、本人および周囲がより良い職場を作ることができると良いですね。

PDD, Pervasive Developmental Disorder. 広汎性発達障害(自閉症圏)
LD, Learning Disorder. 学習障害
ADHD, Atention Deficit Hyper-activity Disorder. 注意欠陥多動性障害
症候学<縦断的 な診断を心がける、成育歴を聴取することが大事

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