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Q&A

新型うつ病とは?

「新型うつ病」とは何でしょう?最近テレビや雑誌でよく目にしますが、よく分かりません。病気なのか甘えなのか……娘がそのようで、どうしていいか困っています。(46歳、男性)

娘様が「新型うつ病」でお困りとのこと、お見舞い申し上げます。「新型うつ病」とはその名の通り、最近話題の新しいタイプのうつ病で、かつての「旧型うつ病」と対比されます。それぞれ精神医学の専門用語でありませんが、分かりやすいため世間に広まっているようです。

「旧型うつ病」とは、生真面目・几帳面の中高年の男性が、仕事や生活のストレスに耐えかねて発症するイメージでしょうか。これに対し、「新型うつ病」とは、敏感・繊細な若い女性が日常の些細なストレスに反応し、情緒不安定となり、時に自傷行為なども生じるイメージです。

以下にその対比を表示します。「ディスチミア」とは、「気分変調症」という慢性・軽症のうつ病のことで、今回の新型うつ病に相当します。「メランコリー親和型」は従来の典型的なうつ病、旧型うつ病に相当します。

新型うつ病=ディスチミア親和型
旧型うつ病=メランコリー親和型

これまで、ディスチミア親和型はうつ病とは認知されず、神経症(ノイローゼ)や心因反応、時には病気ではなく甘えではないかととらえられてきました。しかし、昨今のメンタルヘルスの注目から改めて病気・うつ病であり、適切な治療を施すべきとなってきました。

歴史的には、1970年代に笠原・木村という精神病理学者が以下のような、うつ病の分類を作成しており、新型うつ病はⅢ型:葛藤反応型に相当します。すなわち、若年・中年者が、葛藤状況において、不安・焦燥、時に他罰・依存などをともなう抑うつ状態です。ただし、新型うつ病=ディスチミア親和型=葛藤反応型のみ、とは言い切れません。上記のように若年者のうつ病にはⅡ型:循環型(躁うつ病)の初発・うつ状態も含まれます。躁うつ病の方は旧型うつ病の方のような生真面目・几帳面さを欠き、気まぐれで、社会的逸脱を生じることもあります。このような方が新型うつ病とみなされていることもあります。
そこで、躁うつという心的エネルギーの水準と社会適応という人格の統合水準のベクトルから躁うつ病を眺めてみましょう。それが以下の図に相当します。上に向かうほど、エネルギー水準が高く、躁的因子、躁状態の時の程度を意味します。右に向かうほど、人格水準が高く、社会適応の高さを意味します。

したがって、いわゆる「躁うつ病」のようなエネルギー・人格とも高水準にある人物は病気である一方、政治家や芸術家など社会的に大成功を収めていることが少なくなくありません。逆に「気分変調症」のような低水準の場合、残念ながら思春期からひきこもりを生じていることが少なくありません。
さらに、躁うつ病の亜型として「非定型うつ病」と呼ばれる疾患もあります。これは過食、過眠、鉛様の麻痺 (体が鉛様に重く感じられる症状、leaden paralysis)、拒絶への過敏さを特徴とする病態です。典型的なうつ病の場合、不眠、食欲不振、精神運動抑制を呈しますので、丁度、逆の様な状態になるわけです。非定型うつ病は若い女性に多く、元々、敏感・繊細な性格の方がなりやすいため、本人は具合が悪いのに、周囲からはいつもの性格ではないかと軽視されてしまいがちです。
最後に治療ですが、これらの病態に対する治療は、メランコリー親和型うつ病のように休養と服薬のみでは自然軽快せず、より積極的な精神療法・心理療法を必要とします。具体的には不安や抑うつの背景にある職場や学校の問題を認識し、現実的な解決方法を探索してまいります(問題解決療法)。解決つかない時には、自分自身の考え方(認知)や振る舞い方(行動)を変えることが求められます(認知行動療法)。

うつ病を発病すると、否定的に考えたり、逃避的に振る舞ったりしてしまいがちですから、その時々の状況や気分、そして認知や行動を客観的に記録し、治療者と一緒に振り返ることが有効です。そしてより適切な認知・行動パターンを身に付け、現実社会・生活への適応を向上させていくわけです。
また必要あらば、職場や学校の関係者とも三者面談などを行い、環境調整援助体制を要請いたします。これらの作業は実際なかなか容易に進まないこともありますが、銀座泰明クリニックでは可能な限り皆様方のより良い仕事と生活を実現するためにご協力してまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。

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