よくある質問
Q&Aパニック障害とは
ある日、満員電車で動悸、呼吸困難など起こし、救急車で運ばれました。それ以来、会社へ行けなくなり、心療内科で「パニック障害」と診断されました。パニック障害はなぜ起きのでしょうか? 精神安定剤をもらっていますが、この先、治るのでしょうか?(20代、女性)
パニック障害とは、突然、何の誘因もなく、動悸・息切れ・めまい・吐き気などのパニック発作が生じ、その後も繰り返す心身の病気です。特に、混んだ電車内や狭い部屋など、密閉・密集した空間で起きるようです。そのうちに、また起こるのではないかという予期不安も生じるようになります。そして以前、発作を起こした場所や空間を避けるようにもなります(広場恐怖)。
こころの薬箱より
原因としては心理的な葛藤も誘因となりますが、最近は脳内の神経伝達物質の異常が指摘されています。特に大脳辺縁系・基底核といった部位のセロトニンやノルアドレナリンの伝達異常や以下の図のような神経回路の悪循環が示唆されています。これらの異常が全身の神経系や内分泌系に波及し、上記のようなパニック発作を引き起こすのです。
治療はたいてい数ヶ月かかります。まずはパニック発作を抑えるための薬物治療を行います。SSRIといった抗うつ薬やベンゾジアゼピン系の抗不安薬が上述の大脳辺縁系や基底核に作用し、不安や恐怖を軽減します。パニック発作が消失した後は残存する予期不安や広場恐怖に対して精神療法を行います。
ストレスが生じると、感覚として視床で知覚され、扁桃体へ入力されます。扁桃体はストレスに対する「番犬」とも言われ、視床に入力された感覚を制御をしていています。ストレスが不安や恐怖と判断されると、視床下部を経て全身の内分泌・代謝系が作動したり、他の大脳基底核を経て、動悸や過呼吸が起きます。これがパニック発作のメカニズムです。
一方で、感覚情報は記憶を司る海馬、思考を司る前頭葉をも経由し、扁桃体へ入力されます。過去の深いな記憶からフラッシュバックを生じることもあれば、感覚に対して認知による制御を行い、不安や恐怖を和らげることも可能です。このメカニズムを応用するのが、後述する認知行動療法に相当します。
認知行動療法は現在の精神療法の主流で、歪んだ認知を客観的に観察し、適切な思考・行動へ修正する方法です。治療者と共同し、ワークブックなどを用いながら、対人関係や社会生活を改善していくと有用です。時には発作や不安の再発を生じることもありますが、服薬と行動修正を継続することで、徐々に改善します。気がつくと今まで避けていた電車や部屋へも入れるようになっていますから、どうぞご安心ください。
売れない作家・孝夫(寺尾聰)と有能な医者・美智子(樋口可南子)の夫婦は、美智子がパニック障害にかかったことを機に東京を離れ、孝夫の故郷・信州の山村に移り住むことに。がんに冒された恩師(田村高廣)や、難病でしゃべれない娘・小百合(小西真奈美)、そして阿弥陀堂で暮らす96歳の老婆おうめ(北林谷栄)など、村の人々との温かい交流の中、夫婦は生きる喜びを取り戻していく…。
デビュー作『雨あがる』で世界的にも絶賛された小泉堯史監督による第2作。奥信濃の四季を追うその映像は、この世とは思えないほど荘厳な美しさをたたえており、その中でささやかに生き死にしていく人々の静かで凛とした姿は、現代がなくしてしまった大切なものを思い起こしてくれる。虚飾を捨て、自然と共存することがいかに心地よいものであるかを、シンプルかつファンタジーのように濃厚な世界観で伝えてくれる、摩訶不思議な味わいに満ちた秀作である。(的田也寸志)